はじめに
Flowzを創業して1年半近く経ったのですが、新規サービス立ち上げ支援をさせていただくことが増えました。少しづつですが、価値を提供できているのかなと思いつつも、より高品質×スピード感のある価値提供を進めていきたいと思っています。
新規サービスの立ち上げにおいて、自分たちが出せる価値ってなんなのだろうかと考えると、やはり「顧客理解の促進」×「高速検証体制の構築」×「組織における共通言語構築」この3つなのかなと。
今回は、「顧客理解の促進」の文脈で、何故顧客理解が必要なのか、そして顧客理解を進めるための流れについて書いていきたいと思います。
ユーザー理解の必要性
近年はノーコードツールの進化、AIの進化に伴い多くのサービスが産まれては消えて行ったりと、サービス戦国時代です。少し前の時代であれば、プロダクト/サービスを作れば売れるそんなことも言われていましたが、今ではユーザーに選ばれるための理由が求められます。その理由をつくるために、多くの企業が提供できる価値は何なのかを明確にすることが求められ、そのアプローチとして、「ユーザー理解」や「サービス検証」をおこなっているわけです。
※ユーザー理解を少し調べてみると、JISの「人間工学ーインタラクティブシステムの人間中心設計 ユーザー、タスク及び環境の明確な理解に基づく設計」では、「ユーザーの属性/環境/道具/タスクを可視化し、組織・チーム内で共通言語を構築すること」と記載がありました。
誰かに喜んでもらうためには、その人が今悩んでいること・解決したいこと・欲しいものなどなど調査が必要になるのと同じように、ユーザーに良いサプライズを提供するためにはどのような仕事をしている人がどのような悩みを持っているのかを理解する必要があります。
一方で、提供するプロダクト/サービスは基本1人で創ることは少なく、チームや組織を通じて提供されることが多いので、チームにおいてユーザーが抱えている課題・悩みを共通言語として認識している必要があるわけです。
チーム内の共通言語が違えば、ユーザーに提供する価値・解決策も大きく異なっていくわけです。その結果、認識の齟齬が生まれ、サービスの品質の低下だけでなく、組織における意思決定にも大きなコストがかかってしまいます。
では、そういった顧客理解をどのように進めればいいのか、そしてどのようにして組織における共通言語を構築すれば良いのかについてFlowzのアプローチ方法について書いていきたいと思います。
ユーザーのポジション、動きを理解する
新規サービスを考える上で、まず一番最初にやること、それはユーザーの人間相関図を書くことです。クライアントのサービス開発を支援する時には基本的に「こういったサービスを作りたい」または「こういう価値を提供したい」そういったワードから始まることが多いです。
ただ、今この時点では、「こういったサービス」「こういう価値」というのはとても抽象度の高いワードなわけです。先ほども書いた通り、組織内において共通理解がなければサービスの品質が下がってしまうので、共通言語構築のまず一歩として、価値を提供したい相手の現状を可視化するところからスタートします。
中心にユーザーの役割・名称を記載します。その次にユーザーに最も近い関係者を記載し、どのように関わっているかを線を繋げて記載します。それらを繰り返し、人間相関図を作り上げます。
※人間相関図のことをステークホルダーマップとも呼びます
書いていく時には、具体名を出すのではなく、役割ベースで記載をするとより理解度が深まります。(固有名詞や人物名を書いてしまうと、人によって解釈の幅が生まれます。その幅が認識齟齬を引き起こす原因になりやすいので、「先生」「マネージャー」などある程度共通認識のあるワードで書くことをお勧めします)
人間相関図を作ることで、ユーザーの意思決定や課題が何が起因で発生しているのか、それを引き起こしている関係者が何故そのような事象を引き起こしているのか、そしてユーザーとの関わりの深さ・軽さを視覚的に理解することが可能となります。またビジュアライズ化することによって、チーム内で誰に対してどのような価値を提供したいのか共通ワードで言語化することが可能になります。
ある程度、人間相関図ができたら、次はユーザーの動きやフローを理解するためにカスタマージャーニーマップ(CJM)を作ります。市場の状況によって現状の状態を書くのか、新たに生まれるであろう体験の状態を予想して書くのかは異なりますが、必要に応じてこれから書くものがAs-Is(現状の状態)を書いているのか、To-Be(未来予想図)を書くものなのかは明確に定義しましょう。
CJMを書くときの視点として必要なのは、
- 対象となるユーザー
- ユーザーのアクション
- アクションが行われる環境
- アクションを行うときに必要となるツール
の4つの視点です。これら4つを書き出すことからスタートします。
まずは、対象となるユーザーです。人間相関図に出てきたユーザー全員のステークホルダーマップを書き始めると、カオスになってしまう可能性が高いため、メインとなるユーザーとそのユーザーがアクションを進める上で関わりが深いユーザーに特化して記載を進めます。 Ex. 教育アプリケーションであれば、ユーザー、先生、事務の3社など
次に、ユーザーのアクションです。基本アクションは何かの起点・トリガーがあって発生します。各関係者のアクションに繋がりを可視化しながら書くことでそのアクションがなぜ必要となったのかを可視化することができます。
アクションを記載するときには、記載するワードの抽象度に気を付ける必要があります。抽象度が高ければ高いほど、解釈の幅が生まれ、具体度が高ければ高いほど、解釈の幅が狭まります。ここは正直経験が必要な部分でもありますが、ある程度具体度の高いワードを選びながら、繋がりを可視化することが必要です。
最後にアクションがおこなわれる環境と、ツールです。CJMを書くときにはアクションと関係者を書くことが多いですが、実際に使っているツールとその環境を書くようにしています。人間の記憶として残す場合にテキスト情報だけでは、どうしても記憶を残すことが困難です。基本は映画のワンシーンのように状況や光景にした方が記憶に残りやすかったりイメージしやすかったりします。ユーザーの具体的なユースケースをイメージするためにも、ユーザーの理解を促進するためにも、どういった場所でどういったツールを使って何をしているのかを可視化することを必須としています。
通常、CJMを作るときにはユーザーの感情なども一緒にプロットをしますが、これまで作った内容がなければ、具体的な感情を思い浮かべることができません。なのでここまでやってやっと感情を記載するようにします。
ユーザーの感情・発話をプロットする
ここまででどのような流れで、どのようなことをしながら進んでいるのかを可視化することができました。次は、どのフェーズにおいて課題を感じているのかを可視化するために、ユーザーの感情や発話をプロットしていきます。
ユーザーインタビュー実施前であれば、想定される感情(仮説)を書くようにしましょう。もしユーザーインタビューや実際に顧客と関わる機会があるのであれば、その発話を記録し、マッピングすることをおすすめします。前述しましたが、CJMや人間関係図をつくる目的の多くは組織における共通言語の構築です。ただ、意思決定者やステークホルダーに対して自身が考えてきたユーザーが考えているであろう仮説をぶつけても正直なところ、「あなたの意見だよね?」と同意しかねる部分もあるわけです。
あくまで、こういった資料をまとめるときには主観で書かずに、客観的に書いた方がコミュニケーションを進める上で不純物を減らすことができるので、実際にヒアリングした内容や、ユーザーの発話をプロットすることが大切です。
一方で、発話をプロットするために、発話録・書き起こしをしたりするわけですが、かなり手間がかかります。動画を書き起こすのに録画時間の3倍~4倍ほどかかるとも言われており、実際にやるととても大変なので、「Parrot」を使って書き起こしとユーザーアクション/タッチポイント/ツール/感情などのタグをつけるようにしています。
一緒に動画もセットで確認することができるので、具体的なイメージも湧きやすいですし、インタビュイー(インタビューを受けている人)がどのようなテンションで、どのような表情で話していたのかを見ることができるので、参加していなかったメンバーも一次情報にすぐにアクセス可能です。
終わりに
今回は新規サービス開発の中でも、ユーザー調査の文脈について書きました。正直顧客中心やユーザー主導などいろんな場面で必要性を言われるようになりましたが、ユーザー理解は個人の話ではなく、組織で理解することが必要だと自分は思います。
自分だけがユーザーのことを理解していてもそれは宝の持ち腐れ。人に伝えて、人との共通言語になってからが価値になります。より良いサービスをつくるためにも、ユーザー理解を進めていきましょう!(次回、検証フェーズについて書いていきます)
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Flowzではより良いサービスを提供するための顧客調査や、調査した結果をもとに解決策・ソリューションを検証するためのプロトタイプ構築などこれまでの立ち上げ経験と、グロースフェーズの経験をもとに支援させていただきます。
組織においてユーザーのイメージがまとまっていない、どのようにサービスを立ち上げればいいかわからない、想像しているサービスを立ち上げたいなどお困りのことがあれば気軽にお問い合わせください。