カスタマージャーニーマップは、購買プロセスを可視化し顧客体験を向上させるための有効なフレームワークです。しかし、具体的な作り方や活用方法がわからず、二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、デザイン・エンジニアリング両面からサービスの設計・開発を行っているFlowzが以下の内容について詳しく解説します。
- カスタマージャーニーマップとは何か
- カスタマージャーニーマップの作り方
- 企業におけるカスタマージャーニーマップの活用事例
- カスタマージャーニーマップ作成に役立つツール
カスタマージャーニーマップを活用すれば、顧客の行動や気持ちを深く理解できUXの改善につなげられます。マップを活用するうえでのポイントを詳しく解説したので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、Flowzではデジタル領域でのサービス設計、プロダクト開発の視点からお客様のビジネスをサポートしています。お困りごとがある方はぜひお気軽にご相談ください!
目次
カスタマージャーニーマップとは|概要を解説
まず、カスタマージャーニーマップとはどのようなフレームワークかについて、解説します。
- カスタマージャーニーマップとは企業と顧客の接点を可視化したマップ
- カスタマージャーニーマップとユーザーフローの違い
詳しく見ていきましょう。
カスタマージャーニーマップとは企業と顧客の接点を可視化したマップ
カスタマージャーニーマップは顧客の購買プロセスを可視化するフレームワークであり、商品の認知から購入後までの各フェーズにおける顧客の状況を把握するために作られます。
見込み客がどのフェーズにいるかによって、興味の度合いや心理状態は異なります。顧客の行動や思考、感情は時系列に沿って変化するので、ユーザーのフェーズに合わせて取るべきコミュニケーションを変えなくてはいけません。
なおテンプレートは以下のとおりです。
なおカスタマージャーニーマップには他にもさまざまな型がありますが、重要な項目はこちらのテンプレートでほぼ網羅できるでしょう。
カスタマージャーニーマップとユーザーフローの違い
カスタマージャーニーマップとユーザーフローは、ともにユーザー中心のデザインを実現するためのツールではあるものの、追跡する範囲が異なります。
カスタマージャーニーマップは、商品の認知から契約までの流れで購買者の行動や感情・思考プロセスを理解し、顧客体験全体の改善を目指すフレームワークです。一方、ユーザーフローはサービスを使う人がWebサイトやアプリでタスクを完了する経路を可視化するための図です。
たとえばECサイトの利用を考えると、カスタマージャーニーマップは商品を認知するところから検索・購入・レビュー投稿までの一連の流れを扱います。ユーザーフローは、商品ページから購入完了までサイト全体の使い心地に焦点を当てるのが特徴です。
また、カスタマージャーニーマップはストーリー性のある表現を用いるのに対し、ユーザーフローはフローチャートなどでシンプルに表現されます。
カスタマージャーニーマップはマーケティング戦略立案やペルソナ開発に、ユーザーフローはUIデザインや機能開発に活用できるでしょう。
カスタマージャーニーマップを作る目的
ここでは、カスタマージャーニーマップを作成する目的やメリットについて紹介します。
- 購買者がどのような行動をとるのか仮説を立てるため
- 取り組むべき施策の優先順位を決めるため
- ターゲットに対する理解を深められる
- チーム内での認識を統一させるため
目的がわかれば、商品やサービスにカスタマージャーニーマップをどのように活かしていけば良いのかが見えてくるでしょう。
1. 購買者がどのような行動をとるのか仮説を立てるため
カスタマージャーニーマップを作る目的として、購買者がどのような行動をとるのか仮説を立てることが挙げられます。
たとえば新しいビジネスツールの導入を検討する場合、見込み客はインターネットで情報収集し、資料をダウンロードしたりオンライン説明会に参加したりするでしょう。
資料や説明会でツールに魅力を感じたら、次のステップとして無料トライアルに加入してもらえる確率が上がります。見込み客がツールを実際に利用し、使い心地に満足すれば本契約につなげられるでしょう。
このような各フェーズにおける顧客の行動や感情を予測するために、カスタマージャーニーマップは活用されています。顧客目線に立てば、プロダクトに盛り込むべき機能やサービスが見えてくるでしょう。
2. 取り組むべき施策の優先順位を決めるため
カスタマージャーニーマップを作ることで、購買者の購入プロセスのどの段階に課題があるのかを特定できます。課題が明確になれば、その解決に向けて取り組むべき施策の優先順位がわかるでしょう。
商品やサービスを認知してから購入に至るまでの行動をカスタマージャーニーマップを用いて俯瞰すると、見込み客が各フェーズで抱えている課題や悩みが見えてきます。そのなかで見込み客が購買行動に移行するハードルになっているフェーズを特定し手当てできれば、効率的に成約数を高められるでしょう。
とくにリソースが限られているスタートアップ企業などでは、優先順位を適切につけて施策を実行することが重要です。
3. ターゲットに対する理解を深められる
カスタマージャーニーマップを作成し、各フェーズにおける見込み客の行動や気持ちを俯瞰すると、ターゲット層に対する理解を深められます。
購買者の体験を可視化することで、どのようなポイントで喜ばれているのかがわかるのはもちろん、不便だと思われている箇所も見えてくるからです。顧客が期待する体験と実際に体験していることの乖離を小さくすればするほど、満足度は高くなります。
カスタマージャーニーマップを作成すれば顧客が抱えている課題を発見でき、ひいては満足感を向上させる施策を打ち出すことにつなげられるでしょう。
4. チーム内での認識を統一させるため
カスタマージャーニーマップを作ることで、マーケティングや営業・カスタマーサポートなど、顧客と接点を持つさまざまな部門間での認識を統一できます。
マップを作成せず共通認識を持っていない場合、それぞれのチームや個人が独自の目標を追求してしまうことにつながる恐れがあるでしょう。目指すべきものが全体で統一されていないことは、施策のぶれにつながります。
カスタマージャーニーマップを作成し組織全体の認識を統一しておけば、部門間で発生する誤解や課題解決に対する温度感のずれなどを防げます。その結果、スムーズに業務を進められるでしょう。
カスタマージャーニーマップの作り方4ステップ
次に、カスタマージャーニーマップの作り方について解説します。
- ペルソナを設定する
- 時間軸を定義する
- 行動・タッチポイントを整理する
- 意識や感情・体験を整理する
マップを作成する際は、こちらの内容を参考にしてみてください。
1. ペルソナを設定する
カスタマージャーニーマップを作成するうえで、ペルソナの設定は欠かせません。ペルソナとは、ターゲットとする顧客像を具体的に描写したものです。年齢や性別・職業・趣味などの属性情報に加え、購買行動やメディア接触状況なども含めて設定します。
たとえば、ミーティングの録画情報からプロジェクトごとの進捗やアクションを自動で可視化するツール「Parrot」の場合、以下のようなペルソナが想定できます。
ペルソナを明確にすることで、ユーザーの行動や心理状態を具体的にイメージしながらマップを作成できるでしょう。
2. 時間軸を定義する
次に、時間軸を設定します。商品やサービスが必要になったタイミングから、サービスの存在を知り、他社製品と比較・購入そして継続にいたるまでの時間軸を定義します。
たとえばParrotの場合「膨大な会議動画を直して情報を整理する時間なんてない!」という不便さを感じたところが、カスタマージャーニーのはじまりです。
具体的には、以下のように時間軸を設定できるでしょう。
時間軸 | 概要 |
ニーズ認識 | ミーティング動画データの扱いに不便さを感じる |
商品を認知 | 自社商品(今回は「Parrot」)を知る |
比較検討 | 他の企業のツールと性能や価格を比べる |
仮契約 | 試用期間を活用して、ツールを使ってみる |
利用 | 実際にツールを活用して使い心地を確かめる |
本契約・継続 | ツールがなくなると不便になるので、本契約で継続的に利用する |
商品やサービスによって設定すべき項目は異なるので、サービスに合わせて適切な時間軸を定義しましょう。
3. 行動・タッチポイントを整理する
次に、顧客の行動やタッチポイントを整理します。行動とは見込み客が本契約に至るまでに取りうるアクションのことです。一方、タッチポイントは顧客との接点や交流機会のことを表します。
ニーズ認識の段階や商品を認知するフェーズにおいては、企業側が想定していない行動やタッチポイントが隠れているケースがあります。ユーザーからアンケートをとるなどして、できる限り生のデータを集めましょう。
4. 意識や感情・体験を整理する
行動やタッチポイントを整理できたら、見込み客の意識や感情・体験について整理します。
各フェーズでユーザーがどのように感じているのかを整理することで、時間軸ごとの改善点が見えてきます。
またカスタマージャーニーマップを作成するにあたって、ユーザーからアンケートをとるのも有効な方法です。手軽に済ませるのならば、社外の友人や知人にヒアリングしても良いでしょう。
なおここまでの工程を踏まえ、ひととおり作成したカスタマージャーニーマップは以下のとおりです。
以上で、カスタマージャーニーマップは完成です。一度作成して終わりにするのではなく、実際の見込み客の行動や意見などを参考に、より現実に即した内容にブラッシュアップしていく作業も忘れないようにしましょう。
カスタマージャーニーマップの活用事例
カスタマージャーニーマップを施策に活用した事例を2つ紹介します。
- JCB
- フォルクスワーゲン
1. JCB
まず、クレジットカード入会初期のユーザーに向けたメール施策を改善するためにカスタマージャーニーを分析したJCBの事例を紹介します。
JCBは、入会から1ヶ月後に送っていたメールマガジンが多くのユーザーにとって最適なタイミングではないという問題を抱えていました。
そこでカスタマージャーニーを洗い出し、入会者の行動や情報ニーズを整理することで、カードが届く頃に「入会のお礼メール」を送るなどの対策をすることが決まりました。その結果、メールの開封率が70%に到達し、一人当たりの利用額も約10%上昇する結果につながりました。
本事例からは、顧客体験を分析したうえで適切なタイミングで案内のメッセージを送るなどのアプローチをすることの大切さが伺えます。
出典:JCB|お客様の期待に応え「頼れるカード」になるために、社内を巻き込み突き進むJCB WEB統括部
2. フォルクスワーゲン
フォルクスワーゲンは、顧客体験の向上にカスタマージャーニーマップを活用している企業です。
マップを通じて顧客体験を分析し、ユーザーとのタッチポイントを整理・各接点での顧客体験を最適化することで、持続可能なモビリティブランドとしての魅力を高めています。
このような企業努力があるからこそ、ユーザーニーズに合った高品質な製品やサービスの提供を実現していると言えるでしょう。
出典:Volkswagen Newsroom|Focus on customers: Volkswagen appoints Chief Experience Officer
カスタマージャーニーマップの作成にも活かせる「Parrot」
カスタマージャーニーマップを作成するうえで、ペルソナの作成は欠かせません。
そこで業務効率化ツールのParrotを導入すれば、ペルソナ作成をスムーズに行えます。会議動画をアップロードし、AIチャットでペルソナを作成するよう指令を出すと、会議の内容に基づいたペルソナを自動生成できるからです。
Parrotは他にも、AIを活用して会議のなかで重要な情報を抽出したり議事録を自動で生成したりできます。情報の確認時間を大幅に削減できるため、ぜひ活用してみてください。
カスタマージャーニーマップで顧客が抱える課題を明確にしよう
カスタマージャーニーマップは、購買者の行動や心理を可視化し対策すべき課題を明確にする強力なツールです。購買者の行動・心理状態・接点となるチャネルを詳細に記述し、施策を洗い出すことで、具体的なアクションプランを立てられます。
JCB・フォルクスワーゲンなどの事例から、カスタマージャーニーマップがビジネス上の課題解決に役立つことがわかります。
自社の見込み客について理解し、顧客体験を改善するためにカスタマージャーニーマップを活用しましょう。