「価値マップの作り方がわからない…。」
「そもそも価値マップって何?」
価値マップとはプロダクトの制作や改善を行う際に、ユーザーが何に価値を感じているのかを分析するための手法です。ユーザー分析の手法として有名ではあるものの、価値マップそのものの意味や作り方の本質を理解していないと、意味のあるユーザー分析をするのは難しいでしょう。
そこで本記事ではデザイン・エンジニアリング両面からサービスの設計・開発を行っているFlowzが以下の内容について詳しく解説します。
【本記事で分かること】
- 価値マップの意味
- 価値マップの作り方
- KA法とKJ法の違い
ユーザー分析に役立つ価値マップ以外の手法についても詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
なおFlowzではデジタル領域でのサービス設計、プロダクト開発の視点からお客様のビジネスをサポートしています。お困りごとがある方はぜひお気軽にご相談ください!
目次
価値マップとは
価値マップとは、ユーザーが体験する価値の全体像を可視化したものを指します。ユーザーにインタビューをしたり、製品やサービスを使っているところを観察したりすることで得られた質的な一次データをもとに、何に価値があるのかを洗い出します。
具体的には、ユーザーから得られた一次データを「できごと・心の声・価値」の3つに要素に分けて分析するKA法と呼ばれる手法を用いて情報を整理する手法です。
価値マップを作成する本質的な目的は、何のためにプロダクトを作るのかを明確にすること。頭の中だけでプロダクトを構築して現実化しても誰にも使ってもらえない可能性があるので、アイデアを形にする前に本当にユーザーが求めている価値が何なのかを明らかにする必要があるのです。
価値マップの手法に沿ってユーザーから抽出した価値を基にプロダクトを作れば、ユーザーのニーズに寄り添った製品やサービスを開発できるでしょう。
価値マップの作り方
次に具体的な価値マップの作り方を解説します。
- 価値カードを作成する
- 関連がある価値カードをグルーピングする
- できたグループを時系列にまとめる
各工程に重要な意味があるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
価値カードを作成する
まず、実際に起こったできごとに潜む価値を抽出するために「価値カード」を作成します。価値カードとは「できごと・心の声・価値」の3つの要素にわけて情報を整理するもので、価値マップの作成に欠かせないツールです。
例えば「上司から過去10回分のミーティングを見直して内容をまとめてと依頼された。」というできごとがあった場合。「全部見直す時間なんてない。手間がかかりすぎるよ…。」という心の声があがることが考えられます。
このできごとと心の声から出てくる価値として、例えば「長時間の動画データを一瞬で情報を整理して、すぐに検索できる価値」などがあげられるでしょう。
このように、できごと→心の声→価値の順番に深ぼっていくことで、ユーザーに提供すると喜ばれる価値が明確になります。
関連がある価値カードをグルーピングする
価値カードが複数枚作成できたら、近い価値が書かれている価値カードをグルーピングしていきましょう。
例えば採用の現場で「自己紹介動画からどの求職者が何のスキルを持っているのか洗い出すようと依頼された」というできごとがあった場合。「長時間の動画データを自動で整理できる価値」があげられるでしょう。
すると、先ほどの例の「上司から過去10回分のミーティングを見直して内容をまとめてと依頼された。」というできごとによって生じた価値と同じ系統の価値に落ち着きます。
つまり価値を軸にカードをまとめることで、全く異なるできごとから同じような価値に結びついているケースを見つけられるのです。
できたグループを時系列にまとめる
そして価値カードをグルーピングできたら、それぞれを時系列に整理します。どのタイミングでどのような価値が出現しているのかを分析すれば、それぞれのグループの関係性が明確になるでしょう。
すると、どのタイミングで何の機能が求められるのかが見えてきます。
各グループの関係性を明確にすれば、プロダクトに盛り込むべき要素や反対に優先順位が低い機能などを明確にできるでしょう。
価値マップの作成に欠かせないKA法の3要素
KA法は、価値マップを作成するうえで重要な手法です。そこでここではKA法の基礎となる3つの要素について解説します。
- できごと
- 心の声
- 価値
それぞれの役割を理解できれば、より本質に近い価値マップを作成できるでしょう。
できごと
できごとは、ユーザーが求める価値が生ずる発端です。
価値カードに書くできごとには以下の4つ項目のうち2つを入れると、現実で何が起きているのかをイメージしやすくなるでしょう。
- 状況:~だったから
- 行動:~して
- 動機:~と思って、~しようとして
- 結果:~だった、~と感じた
このとき、できごとに解釈を入れないようにするのがポイントです。例えば「上司から、過去10回分のミーティングを見直してまとめるという無意味な仕事を頼まれた。」というようにできごとを設定するとします。
すると、そもそも「この依頼をなくすためにはどうすべきか」という方向に話がそれてしまうのです。つまりできごとには自分たちが感じたことや思いをせずに、現場で何が起きているのかにフォーカスするのが重要です。
心の声
心の声にはそのできごとが起こったときにユーザーが何を感じるのかを、当事者になったつもりで書いていきます。
ひとつのできごとに対して複数の心の声が出てくる場合は、全ての声を書きだしておきましょう。異なる心の声を書いておくと同じできごとからでも、違う価値が生まれる可能性があるからです。
そのため心の声ごとに価値カードを作っておくと、後々情報を整理しやすくなるでしょう。
価値
価値は「~する価値」「~できる価値」というように「(動詞)+価値」という書き方をします。価値を書く際のポイントは、具体的に書きすぎないようにすること。
なぜなら、価値が具体的過ぎると解決策になってしまうからです。
例えば「動画データを見直すのは面倒くさい」という心の声から「動画データを文字おこしできる価値」としてしまうと、それ以上のアイデアが思い浮かびにくくなります。つまり「動画データを見直すのは面倒くさい」という問題に対して「音声を文字おこしするしかない」という考えに縛られやすくなるのです。
実際は文字起こし以外にも「動画の内容を検索できるようにインデックスできる機能」や「再生速度を速めて視聴時間を短縮できる機能」なども解決策としてあげられるでしょう。
このように複数の解決策を自由に発想するためにも、解決策の一歩手前のラインに価値を設定することが重要です。
KA法とKJ法の違い
KA法とKJ法は名称が似ているため混同されやすいものの、この2つは根本的に異なる手法です。
KA法は「できごと」「心の声」「価値」の3要素をまとめたカードを複数作成し、できたカードをグルーピングしつつ情報を整理する手法で、価値マップに深い関わりがあります。
一方KJ法は、付箋に書き出した情報の要素を俯瞰しながら関連付けて、グルーピングして情報を分析する手法です。課題の整理やアイデア出しのタイミングで使われます。なおKJ法は、各情報の親和性を見つけてグループを作っていくため「親和図法」とも呼ばれています。
つまりKA法は情報を整理するための手法で、KJ法は情報を分析するための手法です。
このように、KA法とKJ法は情報の扱い方に違いがある点をおさえておきましょう。
ユーザーの分析に役立つさまざまなマップ【価値マップ以外を紹介】
最後にユーザー分析に活用できるマップをいくつか紹介します。
- 共感マップ
- ステークホルダーマップ
- カスタマージャーニーマップ
価値マップ以外にも有用なマップは複数あるので、ぜひ参考にしてみてください。
共感マップ
共感マップはペルソナが何を感じどのように考えるのかを見いだし、ニーズを理解するためのツールです。
ペルソナの視点において以下の6つの要素で構成されます。
- 見ているもの
- 言っていること・行動
- 聞いていること
- 感じていること・考えていること
- 痛み・ストレス
- 得られるもの
これらの要素に分けてユーザーの感情に寄り添うことで、制作者や開発者の立場では見えてこなかった課題やニーズを発見できます。ユーザーが商品やサービスを使うときの心の動きを理解できれば、製品やサービスの設計を改善することにつなげられるでしょう。
ステークホルダーマップ
ステークホルダーマップとは、かんたんに言うと「人間相関図」のことです。サービスを提供したい相手(ペルソナ)の現状を見える化するために作成します。
ペルソナの人間関係を明確にすると、以下のような点が見えてきます。
- ユーザーは何に基づいて意思決定をしているのか
- 解決すべき課題はどういったところから発生しているのか
- 関係者との関わりにおいて、なぜ課題が発生してしまうのか
このようなポイントを明確にすれば、誰に対してどのような価値を提供すれば良いのかを見いだすヒントになるでしょう。
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが商品やサービスを購入するまでのプロセスを時系列にまとめたフレームワークのことを指します。主に、制作メンバー間でユーザー像のずれが起きないようにする目的で作成されています。
カスタマージャーニーマップを作成する際は、以下の4つの視点を書き出すことから始めましょう。
視点 | 概要 |
対象となるユーザー | メインとなるユーザーとそのユーザーが行動する上で関わりが深いポジションの人を選定する |
ユーザーのアクション | アクションのトリガーが何かを明らかにする |
アクションが行われる環境 | どんな場所・どんな状況でそのアクションは行われるのかを明確にする |
アクションを行うときに必要なツール | どのようなツールを使って何をしているのかを明確にする |
このような視点を元にサービスの認知から購入までのプロセスを時系列にプロットしていきます。なおカスタマージャーニーマップを作る際は、制作者側の希望や憶測が入らないように注意する必要があります。
そのため、あくまでユーザーの声や調査データに基づいてマップを構築するように心がけましょう。
価値マップを作成して何のためにプロダクトを開発するかを明確にしよう!
以上価値マップとは、ユーザーが無意識に感じている価値をあぶり出し何のためにプロダクトを作るのかを明確にするために作成します。価値マップ以外にも共感マップやカスタマージャーニーマップなど、ユーザー分析に役立つマップは複数あり、時と場合に応じて最適なフォーマットを選ぶ必要があるでしょう。
なおFlowzではデジタル領域でのサービス設計、プロダクト開発の視点からお客様のビジネスをサポートしています。UXデザインを自社サービスでも活かしたい方は、ぜひFlowzにご相談ください!