こんにちは!デザイナーのおまめ(@omame_creator)です🙌
UIやデザインシステムを作る時、サービスイメージは固まってきたけど配色に迷ってしまうことはありませんか?ターゲットの年齢層や文化背景を考えた配色にしたり、競合との差別化やサービスのイメージをうまく伝えるような配色にするのはとても難しいですよね。
その一つの解決策として、人間の心理で考えてみるというものがあります。今回は色彩心理研究を中心に、世界の心理学者や研究者、美術家の「色」についての発表をまとめてみました!
色彩心理学者Faber Birren(ファーバー・ビーレン)の論文
ファーバー・ビーレンは1940年代から1970年代にかけて活躍した色研究の専門家で、色彩に関するさまざまな分野の論文を発表しています。今回はその中から色彩心理研究、色彩調和論、色と形の相関関係理論の一部を抜粋してまとめていきます。
色彩心理研究
色の象徴的イメージは、数世紀を経て降りてきて、歴史、宗教、慣習などによって確立されてきました。
下の表は、主な色の色彩心理の効果を心理的作用と治療効果的な面で分析した内容です。
ファーバー・ビーレンの色彩心理研究によれば、人間が同じ色彩に対して認識する連想と心理は、周辺の環境によって多様に変化します。一方で 、別の色彩心理学者の研究によると、色彩に対する人間の好みはかなり類似した反応を示しています。
つまり、色彩に関するイメージは国や文化によって違えど、好きな色の順序は、性別、国籍である人種を問わず、ほぼすべての点で一致するという結論です。
色彩嗜好の調査では、どこの国でも嗜好色の上位に青が入っています。また、国によってタブーとされる色はさまざまですが、唯一、青だけはタブー色になりにくいという研究結果もあります。
色彩調和論
この章では、色が持つ意味と特定の色と調和する(似合う)色はどれなのかということをファーバー・ビーレンが理論化した資料をもとにまとめていきます。
ファーバー・ビーレンは独自の色彩体系であるビレンの色三角形と呼ばれる概念図を用いて色彩調和を説明しました。
その中でも色彩の美的効果を表現するには、少なくとも7つの用語で、トーン(Tone)、白(White)、黒(Black)、灰色(Gray)、純色(Color)、明るい色合い(Tint)、暗い色合い(Shade)が必要であると述べています。
ファーバー・ビーレンの調和理論は、色三角形の同じ線上に位置する色は、どの方向に接続されていても、それらの色の間に関連する視覚要素が含まれているため、互いに調和することができるという理論です。
ビレンが提示した調和度(上記図の右側)は、色彩の属性と状態に変化を与えることができる色料配合過程を示しています。
この色料配合過程をもとに、基本色から新たな色を作り出しているのです。作り出し方には、ティント、トーン、シェードの3つがあります。
ティントは純粋な色に白が追加された色合いで、例えば青+白=水色になります。
シェードは純粋な色に黒が追加された色合いで、例えば青+黒=暗い青になります。
トーンは純粋な色に灰色が追加された色合いで、例えば青+灰色=濁った青が作られます。下記図は上記説明を図式化したものです。
ファーバー・ビーレンは、色三角形で直線上に連続的に配列された色は調和していると説明しています。
例えば、
- White & Tone & Color:明度が高く明るい色の調和
- Color & Shade & Black:色が繊細で豊かな調和
- White & Gray & Black:無彩色で調和が取れた色
また、連続で配列された色も調和していると説明しています。
- Tint & Tone & Shadeの調和は感動的で洗練されている調和
- White & Color & Blackは基本的な構造で全体的な調和
- Tint & Tone & Shade & Grayの調和は赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫とすべて調和する。
色と形の相関関係理論
ここでは色と図形の関係について、ファーバー・ビーレンの見解と、他の著名な美術理論化、生理学者の理論の一部を抜粋して紹介します。
ファーバー・ビーレンは「色が何らかの形を連想させる」と述べ、赤は正方形または立方体、オレンジは長方形、黄色は三角形、緑は六角形、青は円、紫は楕円形を暗示すると言いました。
黄色については、「三角形または三角錐を暗示し、抽象的に逆三角形やピラミッドの形に関連付けられています」と述べています。
また、美術理論家、画家のカンディンスキー(Wassily Kandinsky)は、色を運動・線・角・平面型と関連付け、黄色は遠心運動、青は求心運動で動き、赤は安定していると発言しています。
また、線について、水平線は黒または青、垂直線は白または黄色、斜線は灰色または緑または赤で表示されると述べています
生理学者であるベバー(E.H.Weber)とフェヒナー(G. T. Fechner)は、色と形態の関係を心理的反応関係として説明しています。
赤は正方形の性格である重量感と安定感に、オレンジは長方形の性格である緊張感に、黄色は三角形の性格である注目星に、緑色は六角形の性格である恨みに、青は円の性格である流動性に、紫は楕円の性格である流動性に関連付けています。
さまざまな研究者の色と形の捉え方
ここでは明度と彩度が色相の中で一番高く、誘導色としてデザインに用いられる黄色を中心に、さまざまな心理学者や教育学者の色と形の捉え方についての論文をまとめてみました。
アメリカの科学者、心理学者、。色彩画家のバビット(Babbitt, Edwin D)は著書の『光と色の原理(Principles of Light and Color, published by the author, East Orange, N.J.)』において、 「黄色は六角形だと明らかにした。その六角形は丸くなく、集まらず、快適でありながら活動性のある形は黄色と共通点がある」と記載しています。
ドイツの哲学者、心理学者、物理学者、医学者であるフェヒナー(Fechner、Gustav Theodore)は、ドイツの解剖学者、生理学者であるウェーバー(Weber)とともに、6つの色彩と形(赤は正方向、オレンジは長方向、黄色は三角形、緑は六角形、青は円、紫は楕円形)について述べました。
スイス美術教育者であるイーテン(Itten、Johannes)は色彩と形を12種類に分けたときに黄色は卵型と規定しました。
ロシアの画家カンディンスキー(Kandinsky、Wassily)は、著書である『精神的な調和の芸術(The Art of Spiritual Harmony, Houghton Mifflin Co., Boston, 1914.)』で色を運動させることによって把握し、 「黄色は遠心的であり、線において垂直線は下洋または黄色、平面において三角形は黄色、角度において30度は黄色を表す。」と述べています。
黄色だけでも、研究分野によって様々な形に深く捉えられることはとても面白く、色の固定概念を根本的に考え直すきっかけになりそうです。
美術理論家、画家のカンデンスキーの色彩理論
最後に私の大好きなロシアの画家、カンデンスキー(Kandinsky、Wassily)の色彩理論を、実際の作品を例に紹介していきます。
色を音としてとらえる共感覚を持っていたカンディンスキーの色の捉え方は独特ですが、その意図を知ると作品を別の角度から捉えることができます。
ゲーテの色彩心理学から影響を受けたカンディンスキーの色彩理論によれば、青色は典型的な空色よりも濃い色になり、沈着しながら悲しみの感情を得ることになるといいます。 塔のある風景でも、それを感じることができます。
黄色と青の混合色の緑色は、その色彩は最も穏やかな色で感情を絶対に反映しないが、休息が過ぎると簡単に退屈する性質のものと定義しました。 赤は暖かい色。 黄色には軽率さがないとし、外部に向かうことなく自分の内部で灼熱する、いわゆる男性的に成熟した色彩を使用しました。
また、カンディンスキーの無彩色に関する研究は有彩色とは異なります。 黒は外的には音がない。 それにもかかわらず、より強くより明確な音で鳴ると述べ、 黒線でその意図を確認することができます。
黒は無限の厳粛な状態や明るい方に行くと、高く明るい青空のように人間から離れて冷たくなる。 カンディンスキーによると、芸術的なオブジェに白は存在しないと言います。
まとめ
今回はFaber Birrenの色彩心理研究を中心に、世界の心理学者や研究者、美術家の「色」についての発表をまとめてみました。
この記事をまとめた後、大規模なWebサービスの展示会に行ったのですが、IT系のサービスのほとんどのキーカラーが青系の色になっていました。
以前の私なら、青は誠実なイメージがあるからかな?と思っていたのですが、もしかしたらITサービスはグローバル化が進んでいるので、どの国でも嗜好性が高い青をあえて選択しているのかもしれないなとか、新しい観点で展示会をみることができました。
コンセプトを決める時や、配色一つに意味を持たせたい時など、この記事の知識がなにかのお役に立てれば幸いです。
最後まで見ていただきありがとうございました!